Scene.32 本棚が涙に滲む・・・・!
高円寺文庫センター物語㉜
「文庫センターのみなさん、うち以上に親しかったですもんね。
さっきも常連さんがね『高円寺トライアングルのニューバーグが閉めてる。あおりで高円寺文庫は元気がない、オービス頑張れよ』なんて、言われましたよ」
「はぁ~そうですか・・・・諦めきれぬと、諦めるか」
「高田渡ですね」
「ルーツは、添田唖蝉坊です」
「店長。笑顔になっても歪んでますよ」
「若旦那。
思い返せば、ボクらのことばかり話して・・・・それでも、にこやかに受け止めてくれていた。マスターもママさんも、お名前すら知らなかった!」
失礼して出ると、道が濡れていた。仰いだ曇り空から、不覚にもこぼした涙のように雨が降る・・・・
長きにわたった書泉の労働争議を、最後まで戦い抜かしてくれたのは高円寺の人情と純情なんだろうな。
「おい、店長!
どころか、みんな雁首揃えて冴えない顔してやんな。このメモの本、入れてくれや。
神田村になきゃ、建築関係だから南洋堂で仲間卸でもしてもらえよな。ったくよぉ、ニューバーグで安上がりランチもできゃしねぇ」
「店長。木田さん、相変わらずっすね。っていうか、強引グマイウエイがパワーアップしてません?!」
「クロ、うまいダジャレを言うようになったな。
あの物言いは照れ隠し&ボクらへの応援なんだぜ。ニューバーグのママさんが亡くなって、落ち込んでんじゃないぞって檄なんだよ」
「そうなんですか、ひとの空気を読むって難しいですね。あと、ダジャレは店長のコピーですよ。
まずはコピー、そこからオリジナリティをって教えてくれたじゃないですか」
「そっか、我ながらいいこと言うな!
クロ、授業料を払えや」
「店長。やっと、調子が戻ってきましたね。安心しました。
さあ、先へ行こう。ですね!」
「そうさ、いつまでも落ち込んでいたら文庫センターまで死んじまうよ。
1月のイベントも一件決まったし、来年こそが正念場になるぞ!」
「店長。忘年会が続くばってんけんが、あちこちでイベント誘致のプレゼンを忘れちゃあかんよ」
「はい、店長。
『ドックベリー』貸切りでも44名の来客予定なので、後は忘年会進行の詰めをお願いします」
「はい、さわっちょ。
ビンゴの商品だよね。例によって、売行きがよくないグッズからでしょ。忘年会費の枠内で考えなきゃいけないから大変なんだよな」
「先にお得感があるTシャツから決めて、グッズ予算枠で考えた方がやりやすいですよ」
「教えられるな。去年も、言われたの思い出した!」
「店長!
いまの営業さん、どうなんですか。声は小さい、あっという間に帰っちゃうって」
「あのな、3・4人の版元さんは編集者が営業もするの!
却って、本屋の度量が問われるんだよ。覚えておきな」
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